バンガロールの休日(夜)


夕方からは、一年前に一緒に働いたことのあったインド人のMくんと会う約束をしていた。彼は、ご自慢のHONDAのバイクに乗って現れた。彼のバイクの後ろの跨り、彼と一緒に夜になるとライトアップされる州会議事堂(ヴィダーナ・ソウダー)を観に行った。州会議事堂の敷地に入るところにはガードマンがいて、乞食を追い払っていた。こういう場面は、小奇麗な建物がある所で、何度か見た。それなので、敷地内にいるのは、ある程度裕福そうな人しかいない。特に、家族連れが多く、みんなライトアップされるのを待っているようだ。
着いたときは、まだ、ライトアップされていなかった。デジカメを出して試し撮りをしていると、私の横で見ていた裕福そうなおぼっちゃんがデジカメに驚いていた。彼は、早速、お父さんに報告をして熱っぽくデジカメについて語っていた。
そうこうしているうちに、ライトアップされ、州会議事堂が浮かび上がった。壮大で綺麗だ!中心の建物だけでなく端から端まで明るくなっている。

州会議事堂
威厳アリアリです
州会議事堂と見知らぬインド人
ちゃんと議事堂を見ましょう

 

しかし、ライトアップされるのを待っていた人たちは、あまり建物を見ていないようだった。2、3分見ただけで十分のようだ。私がMくんに、「10分ぐらい見ていたい」と言うと、「こんなに長い間、ここにいるのは、生まれて初めてだ」と言われた。

州会議事堂にいたとき、Mくんの弟がやってきた。Mくんから話を聞いて、私(日本人)に会ってみたかったらしい。今度は、3人でイスカン寺院(おそらくヒンズー教のお寺)という所に行くことになった。バンガロール市街からバイクで約20分のところにあって遠くないらしい。しかししかし、インド人の言うことを間に受けてはいけない。彼も例外ではなく、やっぱり30分以上かかった。
そのイスカン寺院は、長い時間をかけて来ただけの価値がある美しさだった。

イスカン寺院(近)
本当は、寺院の中もお見せしたい
イスカン寺院(遠)

外から観るだけでも十分だったが、中に入れるそうなので3人で入ることに。参拝者は、こんな夜にも関わらず、長い行列をつくっていた。まず、受け付けみたいなところで靴を脱がされ、裸足になる。建物に入るまで、長い通路を歩かねばならない。私が裸足で歩くのに慣れていないのを見て、M兄弟は笑っている。私が「日本人は、風呂に入るときと泳ぐときにしか裸足で歩かない!」と言うと、さらに笑われた。

建物の中は、とても清潔で綺麗で、足の裏に冷たさが伝わってきて心地よい。外との汚なさとは、大違い。インド人も綺麗にしようと思えばできるんじゃん。この寺では、「Krishna」という神様が祭られていた。その神様は、3つの顔を持つ神様らしく、それぞれの顔に特徴がある。建物に入ると一列に並ばされて、ぞろぞろ歩く。通路の横には、その神様の像があり、参拝者は膝まずいて頭を下げていく。私だけやらないので、少々気まずい。行列のゴールは本堂のようで、本堂では、修行僧らしき人が参拝者一人一人の頭上に、銀の茶碗みたいなものをかざしていた。意味はわからないが、これだけは、私もやってもらった。
私が本堂の通りすぎた直後ぐらいから、
何か儀式が始まりだした。M兄弟は、少しお祈りをしたいようだったので、付き合うことに。本堂の床にアグラをかいて座っているだけでいいらしい。彼らは、リラックスのポーズだと言っていた。熱心な信者たちは、膝を床につけて頭を床につけて祈っている。そのうち、本堂の奥からモヤのような煙とともに、いかにも偉そうな僧たちが数人出てきた。これからが、本番といった感じだ。信者たちは、膝まずいて頭を上下し始め、異様な雰囲気だ。M兄弟は見たがっていたが、私はつまんないので、10分ぐらいで外に出ることにした。

その後、Mくんの弟は別れて、Mくんと夕食を食べ終わると夜11時をまわっていた。
私がホテルに戻ると、私が深夜になってもホテルにいないので大騒ぎになっていた。日本人が一人で、こんな時刻になっても帰ってこないので、会社の同僚、上司、私が会ったこともない上司の上司まで、たいへん心配していたらしい。さらに、次の日は、会社の偉い方々がバンガロールに来てN社とW社の調印式がある予定だった。後に知ったことだが、その調印式は日本経済新聞にも載ってたらしい。私が戻ってくるまでの間、上司の方は、調印式の記事ではなく、「邦人会社員、バンガロールで行方不明」の記事の方が載るのではないか、と思ってヒヤヒヤしてたんだろうな。次の日に、上司に連れられて事業部長という人に謝りに行ったら、「キミが、○○くんかー、心配したよー」と怒られず、笑っていた。
反省した私は、これから連絡を入れてから夜遅くまで遊ぼう、と誓うのであった。

<おまけ>
翌年の8月に、まさか、日本の首相として初のインド訪問が行われ、私が出張したW社のこのビルのこのフロアに首相が来るとは思いもよらなかった。しかも、私の上司は首相に話かけられたのであった。

 

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